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【鼎談】大波三兄弟,三人三役そろい踏みを目指して

先場所の若隆景(わかたかかげ)の入門により,いよいよ荒汐部屋に大波三兄弟が揃いました。長兄・大波(大波渡),次男・剛士(大波港),そして三男・若隆景(大波渥)。福島県福島市出身,祖父は元小結・若葉山,父は元幕下・若信夫という大相撲に馴染み深い一家に生まれ育った三人です。

早速,三兄弟揃っての初めての本場所を終えた三人に,これまでのこと・これからのこと,あれこれを語ってもらいました。

■若隆景: 皆様はじめまして,大波渥(おおなみあつし),改め若隆景と申します。

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まず先場所についてですが,5勝という結果そのものは不満でしかありません。ただ,初めての本場所でしたので,その雰囲気とか流れとか,そういったところについては学ぶことができましたので,その意味では収穫がありました。

■大波: あれは去年だっけ,ちょっと前に部屋で一緒に稽古したんだけど,あんときに比べてハッキリ強くなってて,ビックリしましたよ。

あ,自分自身については,怪我のほうはおかげさまで手術後も順調に回復して,怪我そのものは8割がた治っています。まだ筋力とか,相撲そのもののレベルとか,全体的に元に戻るにはもう少しかかるので,相撲云々はちょっとまだですけど,順調によくなっていますので,この調子でどんどん良くしていくだけですね。港はどうだった?

■剛士: 最高位でしたね。たしかに最高位。まぁその最高位で臨んで,3番。でしょ。正直なところ,3番勝てて満足しているところがあります。だってあそこで3つ勝てるってことは,相手次第,状況次第では勝ち越してもおかしくない,そういうことですから。まだ自分で幕下上位にいるっていう実感はなかったんですけど,ああいうところでも勝ち越しの目があったっていうのは,力がついてきたのかな,っていう気がしてきました。

周りからは,すぐソコだとか言ってもらえますけど,あんまりそういうことは現実感をもって受け止めてません。このまま一所懸命やっていくだけですね。

■大波: 大学(東洋大学相撲部)でいっしょだった村田(主将)と,いきなり本場所であたったけど,どんな感じなの。

■若隆景: 特にやりにくいっていうことはなかったですね。散々練習してきた仲なので,呼吸もわかるし,お互い何をやってくるかもわかるし,何をされても自然に反応できるし,むしろ安心して思いっきりいけます。反対に,全然知らないこっちの世界出身の相手のほうがやりにくかったです。立ち合いも慣れてないので,何がどうなるかわからない相手,全力で行くっていうのはなかなか怖くてできませんね。

それにやはり大相撲の立ち合いは学生相撲と違いますから。ルール的にも違いますので(※日本相撲連盟競技会規程:「立合い」は、選手双方が同時に両手を土俵に付き静止した後、主審の「ハッケヨイ」の「掛声」により立ち合う)。二人でタイミングを探りながらの一瞬の攻防になる大相撲の立ち合いには,なかなか慣れるのが難しいです。

■大波: それにしても,渥の身体がめっちゃ大きくなってたのも驚いたよなぁ。photo

■若隆景: 体重は大学の4年間で30kg増えました。1年生のころは,もっと大きくなれ,ということで,半ば無理して食わされてたんですけど,その間は全然増えませんでした。2年から3年くらいになって,自分から進んで食べるようになってから,徐々に増えていったという感じです。

それでも決して身体が大きいほうではない(181cm,114kg)ので,大相撲に行くかどうかを含め,進路――就職するか入門するかの判断ですね――はギリギリまで検討していました。実業団の相撲のほうからもお誘いをいただいていましたので。

判断にあたっては,特に相談したり助言があったりというわけではなく,基本的に自らの判断での決断です。大波さん,剛士さんとは,ちょこちょこ会ってはいましたが,特に進路について相談したり,ということはありませんでした。

一番大きな判断材料になったのは,やはり三段目付出資格を得たっていうところです。いくらかでも早く出世できるという時間的な意味もありますが,何より,大相撲の世界から公式に「それだけの実力があるよ」とお墨付きをいただいたわけですから,これは大きな自信になりました。そのあたりが大きいです。

■剛士: 大波さんとは,結構ちょくちょく食事したりしてたでしょ。何,話してるの?

■若隆景: ほぼすべて相撲の話です。

■大波: 学生相撲の大会関係の話とか,知ってる人が実業団とか大相撲でどんな活躍してるかとか,相撲関係の共通の知り合いの話ですね。自分の相撲とか進路とか,そういうことはあんまり。

■剛士: といっても,相撲を辞めようっていうふうには,そもそも思わないしねぇ。

■若隆景: そうですね。大学では一番の目標を達成できましたが,それでも相撲はもう終わり,という発想はまったくありませんでした。相撲は小さいときからすぐ身近にありましたから。するのも,見るのも,ごく自然に好きになっていた,そんな感じの存在です。

大学での一番の目標,というのは,インカレ(全国学生相撲選手権大会)の団体優勝のことです。

■大波: あれはヤばかったでしょ。

■若隆景: ええ。決勝まで進んで,そして最後の一番に勝ったほうが優勝,という展開になり,そこで自分の出番となりました。とにかく集中して我武者羅にいけたおかげで勝つことができました。あの瞬間は,ただ「やったぞ!」っていう嬉しさと興奮でいっぱいでしたね。[関連動画:YOUTUBE

大会直前に足首痛めて,そんな中,結構ムリしてやってきてましたので,さすがにインカレが終わってから数日はひたすらゆっくり休みました。ただ,不思議と,やり遂げた感,というか,これで終わったな,という気分にはならなくて,一休みしたらまた,さてこの後,どこで相撲をしていこうかな,という気分になっていました。

大学では相撲だけやっていたわけではなくて,授業もきちんと出てこなしてきたつもりです。それは東洋大の相撲部の方針でもありますし。寮生活なんですけど,テスト期間は部で勉強会を開いて試験対策したり,そのあたりはちゃんとやってきたつもりです。

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後半に続く >

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