荒汐部屋 目次

[目次を飛ばして記事へ]

今日の一枚

大小林

既報のとおり,先場所をもって引退した大小林。怪我により3年間という短い修行期間となりましたが,現役中は多くの皆さまにご声援いただきました。最後に本人から皆さまへのコメントとともに,荒汐部屋勢からの思い出話を,ご覧くださいませ(記事は,断髪当日のインタビューによるものです)。

元・大小林より

不思議なほど感慨もなく,あっさりした気持ちです。あぁこれで終わったのかな,っていう・・・。

むしろ今より,引退を決意するまでが,そりゃかなり毎日悩みましたけど。首の怪我の具合が実はあんまり良くなかったみたいで,治ってからも時々痛むし,土俵で動けなくなったのも結局その影響だったらしくて,それで頭から行かないようにしてもやっぱり不安だし,お医者さんからも無理をしないほうがいいって言われて,もうこれは続けられないな,と。

そんなわけで3年しかいなかったのに,親方には断髪までやってもらって,何から何までお世話になって,感謝の気持ちしかありません。部屋のみなさんには,先場所,花道でサプライズで花束渡されて,本当は感激するはずだったんですけど,ちょうどその相撲で,相手の指が目に入っちゃって,それが痛くて痛くて,眼を閉じても眼が動くたびに痛みが走って涙が止まらなくて,正直それどころじゃありませんでした。何か声もかけてもらったんですけど,申し訳ありませんが,まったく覚えていません。本当に申し訳ないことに・・・。

振り返ると,入門したときは,もっとこう,相撲的な何か,普通じゃないコトが何かあるって,ある程度覚悟してきたんです。部屋の人に聞いても,親方・おかみさんから「入門はやめたほうがいい」とか散々言われてようやく入門したとか聞きましたし。それが,自分の場合,親方に言いに行ったら「ああそう,どうぞ」みたいなフツーな感じで入門して,フツーに荒汐部屋での毎日が始まりました。

どっちかというと共同生活は苦手なんですが,始めてみたらこれも別に何もなくて,フツーに大丈夫でした。むしろ暮らしやすかったです。逆に,これから初めての一人暮らしで,そっちのほうがちょっと不安です。寂しすぎてペットを飼うかもしれません。

前の仕事は,半ばヤケクソで辞めたところがあったのですが,陳腐な言い方かもしれませんが「強い男」になりたいって思いはずっとあって,格闘系の道に進む気ではいました。それでいろいろ考えたんですが,相撲に決めたのは,相撲だけは強くなるのに何もいらないってところです。とにかくみんな同じ稽古場で稽古をして同じ暮らしをする,土俵に立てば同じ,本当に自分の力ひとつで強くなれるし,ならなきゃいけない。そういう世界って格闘系で他にないんですよね。それに,ずっとTVで見てた相撲では,小さい力士も活躍していたので,自分も,という思いはありました。3年では何も言えた柄じゃありませんが,やっぱり「強くなった」って実感は持っています。本場所での白星ひとつひとつがそういう実感になって残ってます。

前,働いてたときは「俺も社会経験を4年積んで大人だぜ」みたいな気持ちがどっかにあったんですよね。だけど,今思い返すと,まだまだでしたし,今もまだまだですね。相撲を通じて一番身に染みてわかったのはそういうことかもしれません。自分が何も知らないってことを学んだと思います。礼儀の基本とか,常識的なことまで含めていろいろ。入門前の自分がいかにガキだったかと思います。そういう意味では少し気持ちも落ち着いた気がします。

短い間でしたが,多くの方に応援いただき,ありがとうございました。まだいつのことかはまったくわかりませんが,一区切りしたら顔を出したいと思っています。では。

元・大小林 (最後の荷造りをする元・大小林)

荒汐部屋勢からのコメント >

このページの先頭へ