今場所はモロ手突きから,突き起こして前に出る相撲取りたかったんすよ。で,今場所二番目の相撲でモロ手からいったら,右手首グキっ!ていってそれからはカマしていく相撲にしました。最後の相撲は自分が相手を寄っていって,土俵際,相手の足が出るのを見てから,自分の足を出したんすけど,周りにはきわどいタイミングに見えたみたいで,物言いがついたんです。協議中,しきりに審判から「勇み足,勇み足」って声が聞こえて,えぇ~そんなぁ~,と思っていたら,一番近くで見ていた審判からの意見が採用されたみたいで,寄り切りで勝つことが出来て,ホッとしました。
親方から体重を絞るように言われてますけど,今は160キロ‘ちょっと’であまり変わっていません。(ここで突光力から『物言い』)「おい待て,廣瀬!『力士名鑑』では165,5キロって書いてあったぞ。あの力士名鑑って,協会の身体測定結果を書くから正確なんだよな。」だから!言ったじゃないですか,160キロ‘ちょっと’だって。
今場所五番勝てた要因ですか?う~~~~~ん。
(という本人の代わりに兄弟子・福轟力が分析)「場所前,体重が増えたのが良かったんじゃないっすかねぇ。こいつは細いっすけど,小力あるんすよ。廻し取ったら,引きつけとか結構強いんす。だから前々から,体重が増えたら勝てるようになるって言ってるんす。今はまだまだ体がないんで,離れて取られると何もできないんすけど,相手に当たり負けしないで,廻し取って引きつけて出れるようになったら,もっと勝てますよ。」
(さらに本人の代わりに兄弟子・荒獅子が分析)「えぇ~,そうですねぇ~。場所前,モンスターハンター制覇したことが良かったみたいっす。」
(最後に本人)そうですねぇ,土俵に上がりたくても上がれない人もいるんだと実感して,悔しさをすべて土俵にぶつけようと思った結果です。
良い夢を見させてもらいました。五連勝した時は,初めて「優勝」の文字が頭をかすめました。実は一月場所に負け越した時から,リアルに落ち込んでたっす。腰の状態は良くならなくて,ろくな稽古も出来なくて,地震の翌日にはぎっくり腰になるし,あのままだったら三月場所は休場だったすよ。
場所前になってようやく腰の状態が少し良くなってきて,そしたら今場所は踏み込みが良くって,全取組で「相手の土俵」で相撲取ることが出来ました。自分が目指している「左差し,右下手」の相撲が取れて,負けた一番も同じように左差し,右下手の相撲で前に出た結果,土俵際投げられて負けた相撲なので納得してます。全取組で納得できた場所なんて初めてです。
一月場所から,ずっといい事がなかったんで,自分,心が折れかかってたんすよ。今場所は六番勝てて,心を繋ぎとめてくれた場所になりました。良い場所の千秋楽は,最高に気分イイっすね。
はい。なんか本場所になると緊張してしまいます。はい。今場所は2勝1敗になったところで,「お,今場所は五番勝てるかな」と思ったんですけど,次に負けて「あぁ,5勝2敗にするにはあと一番も負けられない」と思って,さらに次負けて2勝3敗になった時には「どうしよう,あと一敗したら負け越しだ。ヤバイ,ヤバイ」って思ったら,ショックで熱が39度まで上がってしまいました。それで,点滴を一日四袋も打ってもらって,フラフラの状態で本場所行ったら,全然力入んなくて,負け越してしまいました。
(大波曰く)「小林さんはもったいないんすよ。めっちゃ良い体してるし,今の番付で負け越すような人じゃないんす。稽古場の相撲が取れれば,すぐに三段目に上がってもおかしくないって,親方にも言われてるんすよ。なんか今場所,相手の廻しの結び目くらい後の方取って,しかも一枚廻しで出てった相撲あったじゃないっすか?あんな取り方じゃ,一番力が出ない格好じゃないっすか。あれはなんだったんすか?」自分の感覚では良い体勢になったなぁ,と思ってしかも廻しを引き付けて,さぁ寄っていこうと思ったんです。でも後でニコニコ動画で観たら,全然相手廻しの後ろの方取ってたんだって気付いて,見るのと取るのでは随分感覚が違うなぁ,って思いました。はい。本場所では緊張してしまって,訳わからなくなってしまうんです。
だから,本場所では集中しないとと思っています。ですからジャスパー(荒篤山)が花道でちょっかいかけてくるのはやめて欲しいです。ムカつくことばかりするので。でも,なぜかジャスパーにちょっかいかけられた時に限って勝っています。
まだ稽古場では四股・腰割り・テッポウ,土俵の稽古はぶつかりと,基本的なことしかさせてもらっていません。早く筋力をつけて,相撲が取れるようになりたいです。まだ入門前の相撲と全然変わっていないと思います。本場所になったら,何をしていいか分からないので,なんでもしようと思ってやっています。今はまずは「おっつけ」を覚えることだと言われています。相撲を取ることは楽しいので,早く覚えて,稽古場でも相撲取れるようになりたいです。
今日,初めて髷を結ってもらいました。まだまだ小さな髷ですが,自分も相撲取りになった実感が沸いて,嬉しかったです。
今場所は,「迷いの場所」でした。三月場所がなかったことで,一場所ブランクがあって,所作とかもちょっと忘れてて,土俵の上で動きがぎこちなかったと思います。そんなぎこちなさが軍配に伝わったのか,今場所は二番も差し違いしてしまいました。同じ番付の行司に比べたら,全然ダメダメです。
でも,一番の迷いは「自分が力士を裁いていいのか?」っていう迷いが生じたからです。一連の問題があって,場所が開催できなくなって,「自分たち行司は,力士あっての仕事なんだ」って実感しました。力士は人生かけて,命かけて土俵に上がっている。この一番で,負け越すかもしれないし,負け越したら,引退することになるかもしれない。ひょっとしたら,自分の「裁き」が間違っていたら,その一番で力士の人生が変わってしまうかもしれない。力士あっての行司なのに,力士の取り組を行司が裁いている・・・。自分みたいな未熟な人間がそんな責任ある仕事をしていていいのか・・・と。
自分も人間なんで,感情があります。自分ら行司は,毎朝彼らの血の滲む努力を目の当たりにしています。怪我をしてる力士もいるし,病気をしてる力士もいる。家族を養っている力士もいる。まして,自分の部屋の力士だったら,24時間生活を共にするわけですから,すべて見えちゃうじゃないですか。でも,そんな感情は土俵に持ち込んではいけない。淡々と「裁き」に集中するしかない。それが出来るのが,上の兄弟子たちなんです。
土俵で「迷い」が生じるってことは,まだまだ自分が未熟な証拠なんです。そんな自分の未熟さを思い知らされた場所になりました。