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相撲のいろはを,わかりやすく,楽しく,体系的に解説した画期的な一冊が出版されました。その名も『相撲のひみつ』。
著者は新田一郎さん。新田さんは,現在東京大学大学院法学政治学研究科教授として日本史,とくに中世日本の法制とその意識構造をご専門に研究される一方,東大相撲部部長として,また相撲研究家として,相撲の発展と普及にご活躍されています。
本書は,かつては東大相撲史に残る大学相撲の強豪としてならし,今なお土俵に立つという先生ならではの,実際に相撲に取り組んだ人にしか見えてこない生生しい感触であふれています(たとえば,「忘れられない取り組み」にある“湊富士の気持ち”は,新田ご夫妻にしか達し得ない境地が描かれていて必見です)。
また,アマチュアを含め,相撲界のほぼ全貌を一読で理解できるだけの充実した内容となっています。特に現在の相撲の世界について,その制度だけでなく,実際の運用や,相撲界の人々の毎日がよくわかるように,噛み砕いて説明されています。さらに曽根愛さん(ホームページ・ご本人による内容紹介)のかわいいイラストがその説明をさらにわかりやすく魅力的に彩っていて,見ているだけでたのしい一冊になっています。
類書との際立つ違いは,説明のわかりやすさとイラストだけではありません。それは新田先生ならではの,相撲への深い愛情とともに,歴史家としての醒めた視線から相撲を眺めている点。第2章が「ひみつその2:相撲は『見せる』もの!」とされているように,大相撲の歴史を,興行としてお客さまに見せるための伝統の創造として眺める姿勢は,E.ホブズボームやB.アンダーソンらを経た現代の歴史家にしか取れないものでしょう。この姿勢が本書を,押し付けがましくない,どこか爽やかな軽やかさをもって相撲を読者に印象付けてくれるものにしているのだと思います。
本書もまた,大相撲の伝統を造っていく一冊であることは間違いないことと思います。皆様の相撲観戦のおともに,ぜひ『相撲のひみつ』をご覧下さい。
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