はい。ありがとうございます。5番勝てて良かったです。先場所大きく負け越してしまって,千秋楽のインタビューで「来場所は100%勝ち越す自信があると言いたいところだけど言わない」と言いましたように,大小林の静かなる闘志は内に秘めて名古屋に来ました。はい。今場所は絶対勝ち越すんだって気持ちを持って臨みました。はい。
名古屋は自分が初土俵を踏んだ思い出の場所でもあります。3年前は序二段の人なんて全然通用しなかったのが,気がついたら今の番付ぐらいなら勝ち越せるくらいになりました。はい。
今場所の相撲はというと,相変わらず内容は誉められたものではなくて,去年の九州で脳震盪やっちゃってから,頭でぶちかます相撲が取れてません。今場所も胸からいく相撲ばっかりですから,内容的には全然です。おまけに今日千秋楽では相手の指が目に入るし・・・。はい。別に目が大きいわけでもないんですけど・・・はい。
今場所は3勝4敗。なんとも微妙です。「歴史の飛驒野」らしく今場所を表現すると?え〜そうですねぇ,今場所は「小牧・長久手の戦い」と言ったところでしょうか。
なぜ「小牧・長久手の戦い」かって?あの戦いって勝敗がはっきりしない。戦術的には織田・徳川連合軍が勝ってるけど,戦略的には豊臣軍が勝ってる。どっちが勝って,どっちが負けたんだろうか?はっきりしない。なんともビミョー。
今場所は3連敗スタートだったのに,後半盛り返して最終的には2連勝で場所を終えることが出来ました。負け越してるのに気分は良い。何か手応えを掴んだような。負け越したのに,勝ったような気になる。なんともビミョー。というわけで「小牧・長久手の戦い」みたい。
今場所は「見えない相手」と闘い続けた場所でした。まぁ,なんとか無事怪我なく7番取り切ることができました。一番一番の取組を終えて,サガリを取って,廻しを取って,あぁ今日も怪我なく終えた・・・そう思ってました。
場所前は稽古ガンガンやっていたので,まぁこの位置なら5,6番はいけるだろうと思っていました。それが本場所が始まったら「見えない相手」が目の前に現れて・・・。土俵下,控えに座って,土俵上の相撲を見ていたら,自分が肘を怪我した時のフラッシュバックが悪夢のように蘇ってきて。そして「バキバキバキ!!!」って「あの時」の音が聞こえてきたんすよ。稽古場ではこんなことはなかったんす。でも本場所では全取組でこのフラッシュバックが襲ってきました。
それが最悪の形で出たのが最後の相撲っす。立ち合いが2度合わなくて,3回目の立ち合いでなんとか呼吸合わせて自分から突っ込んで行ったんすよ。そしたら怪我した左肘から差しに行ってて,相手の右から自分の左肘におっつけにくるのが見えたんす。あ!ヤバイ!と思って,自然に体が左肘をかばいに行って気がついたら自分から後ろ向いて負けてました。後でTwitterとかでも「今の相撲は何だったんだ?」みたいなコメントがありましたが・・・はい。そういうことだったんです。
この「見えない相手」を消す方法は・・・分かりません。消し方が分かる方がいたら教えて欲しい。稽古場ではガンガンいけているので,来場所に向けて一層稽古に精進する。出来る事はそれだけです。
まず今場所印象に残っていることから。先場所の千秋楽で言いました「がんばれ東北!がんばれ福島!」の3人,福轟力,大波,剛士が全員負け越しました。うん,家賃が高かった。というわけで,上のこの3人が全員負け越してますので,今場所は番付下の者から振り返っていきます。
突光力。5勝2敗。まぁ〜優勝とまではいかなくとももう一番勝てるかな,という感じでした。彼の場合は怪我の功名と言いますか,復帰後は早い相撲が取れるようになってきました。肘の状態も相撲も良くなってきていますし,部屋でも若い衆から「オヤジ」と呼ばれて信頼されてるみたいです。(???)
え〜次に飛驒野。ま,上出来じゃないですか。まだ稽古場でもぶつかりが中心です。大した稽古もしてないのに,3勝4敗は上出来です。飛驒野は体が柔かい。これから体の脂肪が筋肉に変わって,地道に稽古を続けていけば,相撲はグッと伸びる時がきます。そしたら序二段中位くらいまですぐに行けます。
大小林。場所前は稽古一生懸命やってました。先場所大負けしましたから,今場所この番付では勝って当たり前なんです。ま,それでも5番はよくやりました。千秋楽の相撲で相手の指が右目に入ってしまって,これが治るまえまでしばらくかかるかもしれないので,それがちょっと心配です。
荒行志。4勝3敗。もう一番勝てるかなと思っていました。于(荒行志)はちょっと計り知れないところがあるんです。センスがある。体ももっと大きくなる。皮膚にまだ余裕があるんです。今場所勝った相撲の決まり手は,寄り切り,外掛け,内掛け,送り出し。これでいい。あと欲を言えば寄り切りがあと一番あればなお良い。
寛龍。3勝4敗。人が言ったことを素直にならなきゃダメ。怪我もしない,骨もしっかりしてる。力だって強いんですよ。皆が指導してくれることをきちんとやるように。
廣瀬。4勝3敗。まだまだ自分の体を使い切っていません。それが一番よく分かるのは,すり足をした時の「親指」です。すり足の時に親指が大事な理由は,前傾姿勢で体重を前にかけるためです。廣瀬のすり足の場合は,親指ではなくて,かかとの跡が土俵に残る。これは重心が後ろにある証拠なんです。せっかく大きい体があるんだから,前に前に圧力をかけるように。
力山。4勝3敗。「コツコツ」とか「地道な努力」が一番嫌いなタイプです。全く誰に似たんだか(苦笑)。それじゃダメ。相撲の勝負は一瞬ですが,それに勝つにはコツコツと地道な努力が欠かせないんです。今のままでは怪我が絶えない。人に言われたことを素直にやるように。
荒獅子。入門してもう9年目になりますか。三段目で初めての勝ち越し。6勝1敗。おみごと!びっくり!です。それしか言いようがありません。
荒篤山。5勝2敗。予想通りです。このところようやく言ったことが分かってきたかな,という感じです。押したり廻しを取りにいったりまだまだ中途半端もありますが,まぁ,少しづつ分かってきたようです。
剛士。3勝4敗。まぁ,こんなもんでしょう。自分の実力がどんなものか,いい勉強になったでしょう。相手に圧力をかけ,一気にもっていかれることのないようにする為に,どんどんぶつかり稽古をすること。下半身が硬いので,これから怪我をしないためにも四股を踏むこと。
大波。3勝4敗。今場所負け越しはしましたけど,左前みつを取っての相撲が取れるようになってきました。今はまだ馬力で負けているので,体重を増やす努力をするように。ウエイトトレーニングをして,バランスの良い食事を一日に回数を多めに摂るように。
福轟力。これまで何度も言ってきましたが,立ち合い突っ張っていってから,その次の攻めをどう自分有利な展開に持っていくか,これが課題です。まずは攻めていって相手に圧力をかけている間に組む,あるいは,相手に廻しを与えない速攻相撲をとる。日頃,稽古はよくやっていますから,最良の答えを自力で見つけてもらいたい。
まぁ,思いつくのはこんなところでしょうか。まぁ,私も稽古場ではあれこれと口うるさく言ってますが,普段の生活の中では力士たちなりにいろいろと考えてやっているようです。たまには,おかみさんの雷が落ちることもあるようですが,失敗からも学ぶことも稽古のうち。まずは師匠である私自身の気持ちを引き締め,これからも指導していきます。