荒汐部屋の力士,荒行志(横浜市出身,初土俵平成22年九月場所,最高位三段目)は,引退することになりましたので,ご報告申し上げます。
これまで,荒行志はその運動能力,骨格等々鑑みれば今後一番強くなる可能性をもった力士だという見方が,師匠・荒汐をはじめ衆目の一致するところでした。しかし,付け人で経験した先の巡業で,はじめて関取衆の世界を間近にし,その大きさ,迫力に心底から圧倒されたようで,そこは自身が目指せる世界かどうか迷いが生まれてしまいました。
相撲だけでなく,運動競技を極めようとすると,かなり限られた時間での勝負になりますので,相当強い意志で専心集中して取り組まねばとうてい成功することはできません。常にともに稽古を重ねる相撲部屋にあっては,一人でもその意志が少しでもくじけた者がいては,皆がまともにとりくめない。そのことを一番危惧したのが荒行志本人でした。このままの気持ちのまま部屋にいてはいけないと悩み,体調も崩して先場所前より自宅で療養しておりました。以後,兄弟弟子や各所に相談するなど,真剣に自分と向き合って考え抜き,本場所直前ギリギリまで戻ることを目指しましたが,やはり以前のように関取の座を信じて相撲に取り組むことができない自分に気づき,今週,師匠と話し合った上,引退を決意しました。
これまでの荒汐部屋での修練,そしてこの考え抜いた数か月が,次の人生に向かってきっと糧になることを,荒汐部屋一同願っています。これまで応援いただきました皆様,ありがとうございました。