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新十両の蒼国来は9勝で勝ち越し,福轟力は6勝,大波・五十嵐が序ノ口優勝争い,廣瀬は初の勝ち越しとあって,5割5分の勝率で平成22年一月場所を終えた荒汐部屋勢。
荒汐部屋2階で開催される恒例の千秋楽打ち上げから,おなじみ早川様が,場所の感想を全員にレポートしてくださいました。とにもかくにもホッとしている,千秋楽にしか味わえない一同の雰囲気がジンジン伝わってまいります。
「本日はお忙しいところお集まり頂き,ありがとうございます。また,場所前の1月9日,蒼国来の十両昇進記念パーティーには,大勢の方々にご出席賜りましたこと,この場をお借りして御礼申し上げます。
まずは蒼国来。これはいつも後半はダメなんです。ですから中盤戦までに9番勝って,まぁこんなもんかな,と。
これから更に上を狙おうという中で一番課題を残したのは,立ち合い。立ち合いをもっと鋭く,力強くしないとなりません。これから番付が上がっていくと,立ち合いが0コンマの世界でどれだけ先に優位に立てるか,ということになってきます。それが出来るようになれば,もう一つ上にいける可能性もあるかな,と。そんな場所だったように思います。
その次ですが,現在うちの幕下・三段目は空洞化しておりまして,この位置に誰もいないんですね。当然三段目がいなければ幕下は出ませんし,幕下がいなければその上も出ません。だからそこのところを一生懸命指導して参る所存です。また皆様方におかれましても,近所に体の大きなお子さんをご存知でしたら,お声かけて頂ければ幸いです。
今場所一番残念だったのが,大波が序ノ口優勝できずに,6勝1敗。また五十嵐も序ノ口で5連勝と前半戦頑張っておりまして,正直なところ,このどちらかが序ノ口優勝してくれればいいなと思っていたんですが,結果はそうはなりませんでした。
まぁ,今場所は蒼国来が新十両で9番,あと一勝して10番いってくれれば最高だったんですけど,この辺は彼の性格もあります(笑)。まぁ,とにかく,簡単ではございますが,挨拶とかえさせて頂きます。」
「しんどかったッス。」
(関取として初の15日間をふりかえって)「長かったっす。途中は,『あぁこんな感じかなぁ,慣れてきたなぁ』と思ってたら,後半ヘトヘトになってきました。さすがに初日は緊張しましたね。」
(テレビ観てたら,めちゃくちゃ緊張してるのが分かりましたよ,と伝えると)「えッ,ホントっすか?テレビってなんでも映しちゃうんですねぇ。」
早川様: 千秋楽の翌日,内モンゴルへ「凱旋帰国」[記事]。十両昇進後初の帰国も,日程を早めに切り上げて先輩力士の引退相撲に出席することに。何事にも真摯な姿勢は,今も昔も変わらない蒼国来関。
「しんどかったッス。」
(付け人ととしての15日間を振り返って)「あ~もう毎晩8時には寝てたっすよ。え~,自分が関取の役に立てたかどうか分からないんっすんけど,とりあえずジャマしないようにと気を遣っていたみたいです。場所中はちゃんこ番やってなかったんで,今日は久々に味噌炊き作りました。味,大丈夫っすかねぇ。なんかホント久しぶりに作ったって感じっすよ。」
(相撲の方は,3勝4敗と惜しくも1点の負け越し。しかし,手ごたえを感じた場所でもあったそうで)
「最後の一番で,初めて『自分の呼吸で立つ』って意味が分かったんっすよ。他の部屋の兄弟子から,左手ついてからの,右手を使っての呼吸の取り方を教わって,それを最後の一番でやってみたら,うそみたいにいい押しが出来たんです。これだ!って思いました。」
(と熱く語る荒獅子の話を得意の流し目視線で聞いていた福轟力が) 「内海(荒獅子)さん,相撲はそんな簡単じゃないっすよ。一つ分かったと思ったらそれまでやってきたことのリズムが狂って,また分からなくなりますよ。」
早川様: 福轟力の苦言を跳ね返して,押し相撲開眼となるか。今後の荒獅子,さらに期待しましょう。
「6番は最低ラインって考えていたんで,とりあえずホッとしています。まぁ,自分が負けた相手(唐津海)が序二段全勝優勝したってことで,なんとか自分を納得させてます。先場所も6番は最低ラインって考えてて,自分が負けた相手が優勝しましたしね。」
(じゃぁ,とりあえず来場所も6番最低ラインだね?とふってみると)
「いや,来場所はムリっす。三段目上がれると思うんで。なによりまだまだ改造中の相撲が全然不恰好っすから。立ち合いはもろ手突きで突き起こしていこうと思っても力が足りないんで,差しちゃうんっすよね。
今場所は立ち合いから両差しにいっちゃう相撲が何番かありました。それでもこの地位だと勝てたりするんで,あぁこんな相撲もいいなぁ,とか思うとまた相撲がヘンになるんっすよね。やっぱり相撲のスタイルを変えるっていうのは,難しいっすよ。
年齢も21なんで,自分の中では幕下にはいたいんっすけどね。焦っちゃいけないって分かってるんっすけど,焦ってます。稽古も首のことがあるんで,やり過ぎないようにと思ってますけど,やり過ぎることもあります。
今はとにかくいろんな力をつけるために,稽古終わってからもジム行って筋トレしています。」
早川様: という稽古熱心な福轟力。千秋楽パーティー後は早速「のどの稽古」に汗を流していた。福轟力の稽古は,常に課題を持っての稽古。どの曲も原曲キーのまま唄うというこだわりだ。
「体調が戻ってきたんで,それなりに稽古は出来ました。本場所ではなかなか結果がでませんが,地道に稽古するしかないと思っています。」
早川様: 普段はおとなしく控えめな印象の日の光。弟子の増えた荒汐部屋でも超然と我が道を行くかのような日の光。そんな彼が常にイヤホンを通じて聴いているのはバリバリのビジュアル系ハードロック。日の光の胸の内では熱い魂が燃焼中だ。
「部屋の生活には慣れてきたと思います。入る前は,相撲部屋の生活ってどんな感じだろうと思ってましたけど,結構楽しいこともあります。耳の絆創膏ですか?稽古で擦れちゃったんですよ。髪の毛も伸びてきて,そろそろ髷が結えそうです。少しづつお相撲さんっぽくなってきましたかねぇ。」
(ボソボソ,淡々とした口調で大小林が話していると「荒汐部屋の脱サラコンビです!」と,鴜洲が登場。)
鴜洲「オレらって似てますかね?どちらも社会人経験があるっている経歴が似てるからか,よく間違えられるんっすよ。さっきもお客さんに『君はダイショウリン?』聞かれました。いやぁオレの方がイケテルと思いますが。オレが思うに小林(大小林)は荒汐ホームページでオレのこと読んで,よし脱サラして相撲界に飛び込もう!って憧れたんだと思います。そうだよな,小林?!」
大小林「いいえ。吉田(鴜洲)さんのことは入るまで知りませんでした。」
早川様: ・・・・・。
(初の序二段の相撲は)「やっぱり上に上がると立ち合いも早いし,力も強いっすね。まだ全然相撲分かってないんで,とにかく前に出ることしか考えてないっす。」
(というまだまだ成長期の15歳)「体重も増えてますけど,背も伸びてるみたいっすよ。部屋に来てから,3センチは伸びてます。」
早川様: 負けて覚える相撲かな。これからますます楽しみな成長期。
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黒星・白星が繰り返す「ぬけぬけ」で3勝4敗。
「最後は勝ち越しがかかってたんで,必死で寄っていったら,きれいにうっちゃられました。あとちょっとだ!と思ったら体が浮いて風景が逆転しました。」
早川様: なかなか体重が増えない寛龍も,その気になれば大食漢。今は福轟力に食べろ食べろと言われて食べている日々。この辺りの自主性が育てば,道は開けるハズ。
「無心パワーです。」
「ひたすら押してったら結局自分が気づかないうちに廻しをとってたみたいで寄り切りで勝った相撲が2番。知らないうちに無我夢中で相撲とってたらなんか足を使って勝ってて,『今のなんて決まり手だろう?』って思ったら,内掛けで勝った相撲が一番。稽古場でもしたことがない決まり手です。とりあえず,今場所は飛んだり跳ねたりじゃなくて,前に出て勝てたのが一番の収穫です。」
早川様: とにかく必死で勝ち越しをもぎ取った今場所です。
「arashio.netの星取表に『3勝3敗マニア』って書かれてましたけど,一体どんなマニアなんすかねぇ?」
「また3勝3敗になっちゃって,今度は絶対勝ち越してやるって,最後の相撲は必死で寄っていったんすよ。土俵際もつれて相手もこっちも土俵際に倒れこんで,よし勝ったと思ったら,相手の方に軍配があがってたんっすよ。誰か審判手を上げてくれないかなぁ,って思っていたら一番近くで見ていた審判が手を上げてくれて,協議になったんです。で,協議のアナウンスを聞いてたら『西方力士の勝ちと致します』って言うから,あれ?自分東だっけ,西だっけ?ってキョロキョロしてたら,どーっと笑われちゃいました。あ,自分勝ったと思って急いで勝ち名乗り受けに土俵上がりました。それだけ集中してたんっすよ。」
早川様: 得意の3勝3敗から勝ち越しをもぎとり,いつも以上に饒舌な鴜洲でした。
「しんどかったっス。」
(初めて付け人として迎えた本場所,相当気を張っていたらしい)「自分,付け人の経験がなかったんで蒼国来関の動きを見ながら自分に出来ることを考えたり,支度部屋で付け人やってる他の部屋の兄弟子の動きみて,ここはこうした方がいいんだって考えてました。たぶん周りから見たら何もしてなかったように見えても,自分の中ではめちゃくちゃ集中していました。まだまだ覚えることが一杯です。特に紋付・袴のたたみ方は全然頭に入ってません。」
(となりにいたもう一人の付け人・荒獅子に『紋付・袴のたたみ方覚えた?』と聞くと)荒獅子「いや~,俺はもっとダメっす。」
(そんな荒獅子との役割分担については)「本場所が進むうちに阿吽の呼吸で自然に決まってきた感じです。」
(しんどかった,という言葉とは裏腹に千秋楽パーティーの裏方ではいつになく明るい五十嵐の姿が)「はい!ビール一本追加です!」「はい!ウーロンハイ注文頂きました!」「ハイ!鍋後ろ通ります!」
早川様: 寡黙な(イメージで売る)五十嵐も,Y校時代は応援団員。その気になれば,声がデカイ。場所前は腰の痛みでなかなか稽古が出来なかったというが,本場所では5勝。やはり力士には白星がなによりの薬のようだ。
「現在肉体改造中です。たぶんこの体の中に今ブルースリーが誕生しつつある・・・ってのは冗談ですけど,早く無駄な脂肪を落として相撲に必要な筋肉をつけたいです。自分としては廻しをとらずに一気に出たいと思っています。逆を言えば廻し取られたら何にもできないんで。」
早川様: まだまだ勉強中の新弟子。新弟子は結構余暇の時間が多く,そんな時廣瀬は読書で精神を集中する。おそらく現在荒汐部屋で最も難解な書物を愛読する力士が廣瀬。ブルースリーを塔載した理論派アンコ型力士が来場所,序二段の土俵へと乗り込む。
「意識はしましたね。周りから結構言われましたから。1敗したときは,『お前油断しただろ』って。いや,自分では油断したわけじゃないですけど。でもとにかく本場所でしっかり結果を残すのがプロだと思うんで,稽古場での相撲が本場所でも出せるように精神的にも強くなりたいと思います。」
早川様: 初めての本場所で「序ノ口優勝」の期待を背負った,期待の新人大波。若かりし頃の千代の富士のような筋肉質の体,廻しを取ってのしぶとい相撲。稽古場では,勝っても負けても負けん気の強さを見せる,とくれば周囲の期待は高まる一方。「もう少しスタミナをつけないと」とは同校の先輩,福轟力の弁。課題を見つけながら,大波が発進した今場所。
千秋楽の夜。行司の仕事を終えて誰よりも遅く部屋に戻ってきた式守一輝。目が合うなり,ハニカミながら右手のひとさし指を一本。これが意味するところは・・・「今場所,差し違い一つやっちゃいました。いつの場所も差し違いゼロを目標にしてるのに・・・初場所から早速一つやっちゃいました」(←筆者の解釈)。
まぁ,済んだことはクヨクヨしないのが式守一輝流。部屋に帰るといつもどおりのムードメーカーぶりを発揮。力士たちにプロレス技を仕掛けたりして果敢に挑戦する姿が。
筆者「あっ,ひょっとして謎のマスクマン,レイ・ミシキモリの正体は式守一輝ですか?」
式守一輝「はい・・・あっ,いいえ。何を言わせるんっすか?行司がプロレスラーのバイトしてるなんてバレたら何言われるか分かりませんよ。何より,あの謎のマスクマンはもう引退したんっす。しかも,深夜の引退試合だったらしく,誰にも気づかれないうちにひっそり引退したらしいっす。」
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こうして,楽しい千秋楽の夜はふけて行くのでした。三月場所へのカウントダウンが刻まれる音をしばし忘れて。。。
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