突光力の相撲にもう迷いはない。自分の型を磨くのみ。廣瀬は今,一気に強くなろうとしている。その大きな身体を活かせる身の操り方・型を覚えこむ時。ひとつの山場だ。
ぶつかり稽古になっても,ひとつひとつ丁寧に型を意識。定型の稽古には,相手にもっとも効率的に力を伝えるためのカタチが凝縮されている。
低く鋭く速く,相手に力を出させない形に瞬間的にもっていく。立ち合いは突光力の生命線,ぶつかり稽古はその何よりの鍛錬。
日の出もまぶしい外に眼をやると,飛騨野がマンツーマンで時津風部屋の大先輩の胸を借りて,立ち合いの稽古を続けている。1回1回手のつきかた,足の運び方,腰の角度,ことこまかにアドバイスをしてもらう。未経験者はこうして白紙に最高の技術を書き込んでいけるのが大きな強み。
土俵上では申し合いが始まった。一門の他の部屋の力士と稽古ができる貴重な時間。
荒篤山も加わって,ますます稽古は熱を帯びる。番付を上げた荒篤山,ここで勝負になんぞなるものか,とばかり,ちぎっては投げちぎっては投げ,くらいの迫力だ。
稽古場に関取衆も登場。関取経験者は,四股から呼吸にいたるまでその一挙手一投足が,あまりにも丁寧なことにいつも驚かされる。その身体ひとつで生きていくことの重さがそこに。