荒汐部屋 目次

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廣瀬(ひろせ)

19勝23敗 2場所勝ち越し[星取表

番付的には足踏みした感もある今年の廣瀬。しかしこの一年で自分の取り組むべき課題を痛感,それへの取りくみが成果として現れるのを待つばかりのところまできているようです。

―― 今年前半は序二段の上のほうで順調に行ったり来たりしてたんですけど,最後,久々の2場所連続負け越しで,ちょっとくやしい一年になってしまいました。こうやって一年思い返してみると,すでに,なんか懐かしい気持ちになってきます。

いきなり吉田さん(突光力)の怪我から始まった一年でした。自分は花道で見てたんですよ。今年はあれから始まった。初場所は最高位で,3-4ではね返されはしましたけど,手ごたえをつかむことはできました。それで三月も勝ち越せたし,よし三段目に上がれるぞ,って気持ちが出てきましたね。特に,最後やった相手は,教習所の指導員だった人なんです。教えてもらった人を倒したのは,自分の成長を実感できる瞬間で,忘れられませんね。

ただ,ひとつ気がかりなことがあって,この人に勝ったら自分は三段目の力になったんだ,って思える相手がいるんです。しょっちゅう稽古でいっしょにやってるから,とにかく負けたくない。この人に勝って上がりたいんです。それが去年の十一月から,三月まで3連敗。その点で,自信をもって三段目だ,とはいかない感じがありました。

それで上位で迎えた五月,連勝して2-1のスタートと,最初よかったんです。で,4番目,これも立ち合いよく押し込んで土俵際までもっていって,なのにそこでやられちゃって,あれ以来ちょっとおかしくなってしまいました。あれよあれよと,土俵際でころころやられて4連敗・・・。

七月は番付も落ちたので,上で3つ勝てるんだから5つくらいは勝つぞ,って意気込んで挑んだんですけど,終わってみたら4-3で,あれっこんなはずじゃ,って感じでした。自分は番付がだいたいリキさん(力山)と近いんですけど,力さんが勝ってる相手に勝てなかったり,同じ人に負けたり,で,勝ち越してもあれれ?っていう場所でした。

九月はリキさんとちょうど対戦相手が同じで,リキさんは連勝したんです。だから自分も勝ちたかったんですが,こっちは連敗。負けるような感じはしないんですけど,なんだかおかしい感じで。そうしたら,土俵下で,目の前で,リキさんが怪我するのを目撃することになって,本当に怖くなりました。今年二度も目の当たりにするなんて・・・

十一月は47枚目まで落ちたので,今場所こそ5つを目標にしていった出先の初日,その場所優勝した相手なんですけど,これで立ち合いのペースを完全に狂わされちゃって,以後ちぐはぐに。勝ってる相撲もあらら,と負けて,あげく今度は自分がギックリ腰やってしまって,押すも引くもできず負け越し決定。最後の最後で,7番目までに3日あいたのが助かって,なんとか白星で今年を締めくくることができました。

白星で始まり,白星で締めた今年,オセロで言えば白ではさんで全部白にひっくり返るってことで,いいんじゃないですか。でも,真面目に言うと,去年と同じ序二段で,勝敗差が4つ(去年は1つ)もあるのは,何とかしたいです。

課題ははっきりしていて,土俵際です。腰を下ろしてまわしを押す。すぐにどたばたしてしまって,やられてしまう。この身体なんだから,まっすぐ,どっしり,それを貫かないといけません。3年目になって,逆に緊張するようになってしまいました。初土俵のときのほうがよっぽどリラックスしてました。どうしても勝ち焦ってくるんですよね。それが土俵際のばたばたにもつながってる。あわてず騒がず,相撲もメンタル的にも,ゆっくり,まっすぐ,どっしりと行きたいです。特に今は,腰をやってしまったので,これも焦らないで,クセにならないようにゆっくり動かしていって,しっかり治していきます。

ただ大小林が引退してから,まだ自分のペースがつかめないでいます。でも,いつまでもそうは言ってられないので,あいつも一所懸命はたらいているみたいだし,こっちも頑張らないと。それと今年は,他にも引退した人が久しぶりに挨拶に来たんですけど,すっかり社会人になっててびっくりしました。辞めても元気にやってる姿を見ると,やっぱり安心しますね。

来年で4年目になります。入門したころ「三年先の稽古」だと思ってやってきましたが,それがまだまだ足りなかったんだなって,今,実感しています。特に,基本を増やしていかないと上がれないことがよくわかりました。特に基本をしっかりやって,またもう「三年先の稽古」と思って,自分を奮い立たせて頑張りたいです。

写真

写真:この壁をぶちやぶる明るい来年を期待させる朗らかな廣瀬。は,いいとして,後ろでわざとらしく映りこもうとする人が...

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寛龍(かんりゅう)

23勝19敗 2場所勝ち越し[星取表

秘めたる闘志,というのは寛龍のためにあるような言葉です。稽古場でも本場所でも普段でも飄々としているように見えて,実は勝負への強い執念をもっている。そんな寛龍が垣間見える今年の総括を。

―― うーん,全体を通しては4つ勝ち越しですけど,負け越した場所が4つで,多いですね。もっと勝ち越したかったです。勝負どころをことごとく落としたって記憶です。自分のばあい,3つ勝ってからが問題で,いっつも3つ勝ってから全然ダメになってます。この調子でいけるいける,勝てる勝てるって言われれば言われるほど,勝てるはずなのに勝てなかったらどうしようって思い出して,身体の具合がガチガチにおかしくなってくるんです。

緊張しない対策はいろいろ考えてやるようにしてるんですけど。だいたい緊張が襲ってくるのは,花道に立ってからなんです。支度部屋で体を動かしていい感じでいても,いざ花道にでると,身体の中からカラカラに乾いてきて,身体がギシギシしてくる。だから,花道に出るまえに,口にいっぱい水を含んでおいて,花道でそれを少しずつ飲むようにしました。あと,土俵下でもムズムズ身体をうごかして,ポキポキやって,固まってしまわないようにしてます。

なのに,一月・七月と,3-2から連敗で負け越し。十一月なんて3-1から3連敗での負け越し。あと1番で三段目,ってところまで来てこれだから。

話をもどして,三月は,珍しくすんなり4連勝して5-2でしたけど,4つ勝ってからはやっぱり全然身体が動かなくなってました。五月は早々に負け越したんですけど,この時は,まあ来場所勝てばいいや,みたいな感じで結構気持ちはすっきり切り替えられたんですけど,そのせいもあって,七月の3-2からの負け越しはちょっとショックでした。この時,なんか,親方から話しかけられたのに全然気づかなかったらしくて,親方もあっけにとられて「あんなに緊張して相撲とれるのか」って言われてたらしいです。

それで九月は大きく番付落としたので,たくさん勝ちたいなと思ってました。この時は4連勝できたんですけど,この場所に限っては,なぜかすごくラクにとれました。勝ち越してからも身体が動いて6-1。やっぱり,何にもないと大丈夫なんですかね。次の十一月,三段目が見えてからあんなになるとは思いませんでした。まあとりあえず,来場所です。

今年は,あんまり自分では自覚がないんですけど,身体が大きくなったって人には言われます。お世辞が本気かわからないので,本当かどうかよくわかりませんけど。

来年はとにかく緊張したくないですね。緊張しなくなる一年にしたいです。

写真

写真:その手でゲームだけでなく,まわしを掴めば誰にも負けない怪力を発揮する寛龍。このたくましくなった肩の広さが物語る。

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