荒汐部屋 目次

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荒篤山(こうとくざん)

22勝20敗 4場所勝ち越し[星取表

順調に力をつけ,順調に番付を上げてきているような印象の荒篤山ですが,今年は途中,ひとつ転機があったようです。

―― 五月まではエレベーターで行ったり来たり。それで七月,剛士に抜かれたじゃないですか。ヤバイなって思いましたよ。正直ヤでしたよ。経験とか全然違うからしようがないってのはあるけど,それでもあとから入ってきたのに抜かれるのはイヤなんですよ。しかも一年で幕下まで上がられて。自分,結構負けず嫌いなところがあるんですよ。もっと勝ちたかったですね。

去年の五月からの連続勝ち越しで今年の一月は始まりました。それでせっかく53枚目まで上がってきたのに,2つしか勝てなかった。この時はけっこう「あ゛ーっ!」てなりましたね。でも三月は気合が入りました。終わってからフィリピンに帰ることにしてたので[関連記事],何が何でも勝ちたかったんです。3-3になっちゃったんすけど,意地で勝ちました。

五月はスタートが最悪で,いきなり3連敗。4番目も運が悪くて,超苦手なタイプの人とあたったんですよ。こりゃ4連敗もあるなって,ちょっと覚悟はできてたんですけど,そしたらリキさんが「勝ったらジュースあげるよ」って言ってくれて,なんかめちゃくちゃ力が湧いてたんですよ。で,勝ってジュース2本もらいました。

だけどこのころは相撲が悪かったっすね。引きすぎ。自然に体が引いちゃうようになってました。勝てるのに,そこで引いたり。引くとほぼ負けるってのはわかってるんですけど,身体が勝手に。みんなにも引きすぎだって言われてました。

それでちょっと意識するようにして,そうしたら七月からは引かなくなりました。変化もしなくなりました。こわいこわいって思ってるとダメ。自分はやっぱり真っ向勝負。引いて負けると,気分がすごく悪いんですよ。あぁあ,失敗したなぁ,みたいな後味の悪さがずっと残っちゃうから。でも真っ向行って負けたら,まだ力不足だなってスッキリするんです。真っ向勝負で負けたほうが気持ちがいいだろって親方にも言われて,そうわかってから楽に相撲ができるようになりました。

入門してから自分はずっと「とにかくガンガン前に行く」って言ってたんです[参考記事]。そういう自分の昔のコメントを,渡(大波)が見せてくれたんです。このころは,組んでもある程度相撲が取れるようになってきて,あれこれいろんな相撲を覚えてたんですけど,それでちょっとヘンな相撲になってしまってたんですよね。赤井さん(福轟力)には,お前は何も覚えないほうがいいって,ずっと言われてたんですけど。それで,七月の初日の前に,渡に昔の自分のコメント見せられて,それでハッとして,変わりました。やっぱり,ガンガン前にいくしかないんだって。

渡には,このときだけじゃなくて,いろいろ考え方を教えてもらってるんです。勝ち越そうとおもって場所に臨むと緊張するし目標が遠いから,まず3つ勝ちにいって,そこから1つでも積み上げるって考えたほうがいいとか,いろいろ。

えっと,それで考え方を変えて前に前に行くようになってから,七・九・十一月とまた連続で勝ち越せました。先場所の最後はさすがに緊張しましたよ。3-3だったんですけど,相手が大ベテランの元関取っすよ。緊張しますよ。勝てましたけどね。

さあ来年は,まず一月がひと勝負ですよ。番付的には5つで上がれそうですけど,そういうことは考えないで,とにかく前に。来年は,もっと前に前に。何も考えずに,前に前に。それしか考えない一年にします。

写真 写真:この一年,三段目でみっちり鍛えられた荒篤山。里帰りも果たして一段とまぶしくなりました。来年は幕下でさらに明るくかがやきます。

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剛士(ごうし)

29勝13敗 4場所勝ち越し[星取表

序ノ口優勝に始まり,年間勝率もブッチギリの部屋1位。今がまさに鍛え時,連日ヘトヘトになるまでの猛稽古が続く剛士にとっての今年は?。

全体としては,まあアレですけど,最後がどうしても,ひっかかりますね・・・。十一月場所前までは,幕下昇進を決めて,もう最高の一年でした。それがこんなことに・・・。幕下で年を越したかったなぁ・・・。もう泣いちゃいそう。自分みたいな相撲経験者だったら,ここまで上がってくるのは当然だって言われてるし,そこで勝てないんだったら,それはただ弱いってことです。

一月は序ノ口優勝こそしましたけど,内容はあんまりよくなくて,なんだかバタバタしてました。経験が全然違うんだからもっと圧倒して勝たないと・・・。三月は序二段で2敗。これもハッキリ負けすぎです。なんだか本場所に行くとどうしても焦っちゃうんですよね。どっしりした相撲がひとつもなかったです。

このころから稽古量が多くなってきたんですけど,ずっとその成果の実感が全然ありません。ただ,確かなのは体力はついてるってことくらいで。まぁ,あんだけやって体力がつかなかったらどうしようもないですよ。泣いちゃうどころじゃないですよ。

五月は,三段目に上がって,初日いきなり負けちゃったけど,終わって6勝。つづく七月は,20枚目で3勝どまり。だけど,これは仕方ないです。実力です。もう気持ちで負けてました。気持ち負けっていうのは,どういうことかっていうと,結構大きい人と当たったんですけど,もうその見た目がおっかないというか,見た目の威圧感でしてやられたって感じです。でも,ここらへんで自分と同じくらいの経験の人と当たって,それで3勝だから,これは仕方がない,実力なんです。

そして九月,先場所と内容的にはそんなに違わないと思うんですけど,6勝。違いをあえて言えば,やっぱり気持ちですかね。確かに気持ちは全然違いました。変えようと思って変えたんじゃなくて,まあ慣れですね。先場所負けたことで気が楽になりました。前半1-1からのスタートになったんですけど,そこから5連勝。最後のほうは幕下が見えてきたんですけど,それもあんまり気にならなくて「まあ自分の相撲をとってりゃいずれ上がるだろ」くらいの気持ちでいれました。

だから十一月・九州も普通にいけるつもりだったんです。稽古もやったし・・・それが,カス。ひどい。こんなに相撲が取れないことなんて初めてです。あの時なら,相撲始めて1年の同期・飛騨野にさえ負けてると思います。飛驒野のいい時は立ち合いがすごいんですよ。そういう一番いい飛騨野の相撲にだったら完全にやられてると思います。もう負けに負けました。究極ネガティブ。体調もいい,メンタル的にもいい,なのにまったく相撲にならない。場所前の稽古では,幕下上位の人ともけっこうできたので,勝ち越す自信をもって臨んだ場所だったんです。それなのに・・・。あれだけ稽古して,もう毎日関取にも引っ張ってもらって,それで勝てないんだったら,もう一生勝てないんじゃないか,って気になりました。自信喪失しましたよ。鼻をへし折られました。

結局,今までヘンに経験があったから,負け慣れてないんですよ。一敗一敗がいちいちズドンと心にのしかかってくる。最後の一番も勝ったにしても内容はひどい。緊張してたわけでもないし,身体が動いてないわけでもないのに。もう,どうして勝てないのか,どうして相撲にならないのか,さっぱりわからなくなってました。

今にして思うと,七月場所の5日目,ここがポイントだったように思えます。圧倒的に負けました。こっちは最高のツッパリができたんです。なのに,そんなのお構いなしに相手の一発でぶっ飛ばされた。この時,いわゆる戦意喪失状態になりました。これが相撲なんだな,と。自分の力のなさを思い知らされました。どうせなら最初っから一発でヤられてたら違ってたのかもしれませんけど,こっちに最高のツッパリをさせるだけさせて,そのあげくの一発,ですから。完全に心がくじけてしまいました。このいたいけな青年の敏感な心が,傷つきましたよ。脳裏に焼き付いて離れません。次の場所は,その人に勝てたんですけど,やっとの思いでの勝ちで,とにかく七月場所のその負けが重くのしかかっています。

来年は,自分の中では幕下復帰,って思ってるんですけど,転がり出したら転がるものです。先場所転がり落ちだしたところなので,何とも言えませんよ。三段目の下のほうまで転がっていくかもしれません。そう思っちゃったらイヤになるだけなので,これを手に頑張るだけです。えへへ,まだまだ頑張ります。ガンガン頑張ります。めいいっぱい力をつける一年になるような気がしてきました。俺はやるぜ! 俺はやるゼ!! とことんやってやるゼ!!!

写真写真:泣いちゃうとかいいつつ妙に威勢がいいのは,予約していた「AKB1/149 恋愛総選挙」(ゲームソフトだそうです)が届いたからです。

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