荒汐部屋 目次

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2012年,今年を総括する

2012年もあっという間に終えようとしています。

そこで,ことしも恒例の一年を振り返っての思いを聞きました。各場所直後の総括ではそのときの生の感触がありありと語られますが,一年全体を視野にいれて振り返るとまた一味ちがって,いろいろ大きなことが見えてくるようです。

荒汐部屋勢の2012年を,各自たっぷり振り返って,そして来年の抱負を存分に語ります。

※以下,星取表へのリンクは「荒汐部屋星取表」(前川様作製)の各ページになります。

飛騨野(ひだの)

17勝25敗 2場所勝ち越し[星取表

昨年11月,数年間の沈黙を破って入門した飛騨野。相撲経験まったくゼロで始まった飛騨野の土俵人生の1年目は,どんな感触だったのでしょうか。

―― 2場所勝ち越せましたから,全体的にはとんでもなくイイ一年だったと言えますね。まさか今年勝ち越せるとは。しかも2度も。

ことしはじめの一月場所,はじめて番付に名前がのって,いきなり連勝でスタートしたんでした。この時点で,結構いけるぞ,4勝,いや5勝くらいできるんじゃないか,って思ったんですけど,すぐさま壁にぶち当たって,はかない期待は一瞬で打ち砕かれました。その後,5連敗。まったく歯がたたない。これで,ああ自分の実力はやっぱりこんなものなんだなと思い知って,勝ち越しなんて遠い遠い未来の出来事だと思うようになりましたね。まさに関ヶ原,西軍総崩れ,壊滅に等しい状況でした。これは五月も同じで,あ,あ~,っていう間に負けている,そんな取り組みが続きました。

三月は勝ち越しこそしましたが,初めて同期と当たって,前相撲のときは勝てたのにここでは負けて,なんだか置いていかれる感じがして,自信を失いました。まぁ富山に帰る場所だから,勝ち越せたのはよかったんですけど。

そして七月名古屋。いきなり3連敗。初日から負けが込むのはこれが初めてで,すっかり落ち込んでしまって,あぁあ,また序ノ口に戻るんだなぁ,やっぱり序二段じゃ無理なんだなぁ,とか思ってましたが,終わってみたら3-4で,翌場所,まさかの序二段最下位に踏みとどまることができました。そう,場所後に言いましたが,小牧・長久手の戦いよろしく,勝ったんだか負けたんだかよくわからない感触の場所だったと言えますね。

その九月。実はこの場所で,ようやく自分も力をつけてきてるんだな,って印象を持てるようになった場所でした。これまで負けていた相手に勝てだしたんですね。特にこの勝ち越しを決めた一番は,これまで2回負けている相手だったし,つっぱって押し出す自分の相撲がとれたこともあって,今年いちばん印象に残っている取組です。

5月で相撲教習所が終わって,部屋での稽古が始まったんですけど,部屋の稽古はやっぱり厳しいんです。やっていること自体は,たぶん教習所のほうが多いくらいだと思うんですけど,部屋の稽古は時間が長いんです。ぶつかって,四股やって,ぶつかって,やってもやっても終わらない感じがするんです。それが厳しい。最初のころは,え,まだこんな時間なのか,って稽古の途中でなんだか憂鬱になってきてました。だから最初のころは,稽古も休みがちだったんですけど,だんだん時間の使い方がわかってきて,7月に休んでからは,12月半ばまでずっと休まず稽古できました。まぁ生活面もふくめて,このころからだんだん慣れてきたんですね。

それで十一月,3勝でしたが,親方に「飛騨野のこの3勝は5勝分の価値がある」って言ってもらって,これが今年一番うれしかったことです。五月,同じところで1-6だったのが,半年かけて3-4まで来たから,自分でも強くなってんだなって実感しました。

ぶつかり稽古をかなりやったのが自信になりました。連日すごく細かく教えてもらいましたし。立ち合いはかなり良くなってきたんじゃないですか。

さて,ここで親方からもリクエストのあった宮本武蔵になぞらえて,何か語りたいんですが,考えるに,武蔵って基本的にいつも勝ってるじゃないですか。あまりにも自分と違ってて,なぞらえようがないんですよ。ただ,そんな武蔵でも,白鷺城に3年幽閉され,その間に力をつけ成長したといいます。だから自分も,武蔵と同じく3年はじっと頑張って,武蔵の境地にたどり着きたいと思います。

今年は一年,いろんなところに行きましたけど,どこでも応援してくださる人がいて,本当にうれしいです。地元に戻っても実感します。ま,富山県ただ一人の力士,ってのは,自分にはまだ荷が重すぎますけど。富山にいると,車に乗ってるだけでも声をかけられるし,ただ歩いてるだけで幼稚園に呼び止められて紹介されたり,近所の人も,配達の人も,みんな自分のことを知っていて,ちょっとオソロシイくらいです。こんなに注目されてしまったら,ちょっとやそっとじゃ辞めれませんよ。

場所でも,富山からわざわざ見に来てくださったりして,土俵で仕切ってたら声が聞こえるんです。力が湧いてきますよ。来年は,期待に少しでも応えることができるように,はんぎりかんで稽古するちゃ。

写真

写真:今年の全取組リストを見ながら一年を振り返る飛騨野。体型が力士のそれへと変わってきた。完全に覚醒した一年。

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荒行志(あらぎょうし)

22勝20敗 3場所勝ち越し[星取表

歩くデータマンの異名をとる荒行志。自分のだけでなく,かなりありとあらゆる取組が頭に入っているようで,取組情報は荒行志に聞けばだいたいわかります。そんな荒行志の2012年は・・・。

―― 今年ですか? よかったですね。徐々に力がついてきた感じがあります。相撲も確実によくなっていると思います。

星の動きを見ると,今年は順調にエレベーターにのって上がっていくことができた1年だったと思います。たとえば,4-3,3-4,4-3のように同じ星がつづくと番付は上がるんですよね。今年はこのパタンでした。結果として,来年の初場所は,いい所からスタートできます。

今年は一月,心機一転,「ちゃんとした」相撲をとることを心掛けた場所からスタートしました(注:去年までは,とにかく勝てばいい,という変則相撲で勝ちまくっていました)。もちろん,いきなりそんなことがちゃんとできるわけはないですから,一月は2-5という結果でした。

三月,大阪まで来ると,だんだんまわしを取って攻める形が見えてきました。このころまでに自分が目指すべき型っていうのが決まってきてたと思います。この大阪で5勝できたので,五月はその力試しになる地位(序二段47枚目)になれました。結果は3勝でしたが,あの位置でまともな相撲で3つ勝てたのは,この方向で間違ってないんだなっていう納得ができる場所になったと思います。

つづく名古屋は70枚目でしたが,ここで後半までに4-1まで行けて,はじめて三段目が現実のものに見えた場所になりました。去年,変態相撲で16枚目に上がったときとはハッキリ違う感触です。

九月は偶然先場所と同じ人と連続であたったんですけど,先場所勝った人に連敗して,気づいたら1-3。しかも負け方が同じ相撲ばっかりで,ちょっと落ち込みました。立ち合いでワキがあいてスパンと入られて・・・,そうなると自分は軽いからなすすべなく負けます。その連続でした。でもこの時,1年通せばミスがでることもある,そこが弱点なんだから直せばいいんだって,気持ちを切り替えました。

そして十一月場所,とにかく5勝できたので,再び三段目への挑戦権を得たところまで来れたのが素直にうれしいです。そういう意味で,この場所の最後の一番に勝てたことが,来年につなぐ意味でも今年一番大きい一番になったと思います。

去年まで勝ってたときは,オレこのままイけんじゃね?,ひょっとしてガンガン上がっちゃうんじゃね? 的な感じで思ってたんですけど,ま,それはまったく根拠のない自信でしかなかったんです。でも,今回は違います。まわしを取って力をだせるようになってきましたから。

ただ,去年は1年で15kg順調に大きくなったんですけど,今年は体重面ではサッパリ。全然変動がなくてサイアクでした。でも,ジムに行って筋肉は確かについてるから,来年はその成果が体重として出てくれたらいいなと思ってます。そろそろ大きくなる時期が来るような気がしてますし。

そう思うと,今年はトレーニングに頑張った一年だったとは言えると思います。というか,ジムは気楽で楽しいんですよ。頑張ってする,って感覚じゃないですね。娯楽っていったらなんですけど,そんな感じです。え? でも四股も前より踏むようになったねって? あ,あ,確かにちょっと踏むようになりました。実は今まで,四股でつく力はジムでもつけられるだろうって思ってたんですけど,体幹を支える筋力とか,相撲に大切な力って四股でしか身に着かないものがいろいろあるんですよね。今さらですけど,だんだんわかってきました。じゃあ,四股もジムみたいに楽しくやれるかっていうと,これはかなり違うんです。ジムの場合は,記録とかその場でハッキリわかる手ごたえがあるんですが,四股はもっともっと先に答えがでるものなんですよね。その場のわかりやすい手ごたえがないから,キツいんだと思います。

来年は二十歳になるので,まず初場所で勝って,とにかく一度,三段目に上がってみたいです。そしたら一年,序二段と行き来しながらでも力をつけていきたいですね。って言っても,まだ上がったこともないので,何にも言う資格はないんですけど。

でも大丈夫。Moochがずっと見守ってくれてるから。(「むーち」ですか?)はい。Mooch(ムーチ)です。1998年8月1日産まれ(Beanie Buddies公式記録)のクモザルです。ちなみに服は犬用です。初代の生まれ変わりで,小学校2年生のときに自分のところにやってきました。初代の話は,泣いてしまうのでしないでください。  もぉ,Moochったら,おまえは出たがりだなぁ。何?みなさんにご挨拶したいの?まだMoochには早いよ・・・(以下,延々と二人の世界がつづく:ちなみにMoochは,荒行志のそばにいるときは,確かに生きているんだとわかる動きをしています。ただし普段はなぜか大波の枕元にいます。が大波の意思によるものではないようです。)

写真

写真:去年までの相撲がウソのよう。ずっとずっと上にたどりつくために,真っ向から相撲に取り組む荒行志。と,見守るMooch。

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