荒汐部屋 目次

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力山(ちからやま)

17勝14敗11休 2場所勝ち越し[星取表

今年は三段目昇進を果たしましたが,九月の途中休場以来,まだ本格的な稽古再開に至っていない力山。不運がたたみかけるように襲ってきたこの一年を振り返ってみると・・・

―― こうして見返すと,もう星取表がスッカスカですね。とにかく怪我が多い一年でした。イヤになる。

一月場所の千秋楽,最後の1番で6勝になって,あのときで今年は終わった,そんな感じです。11日目に勝って5勝目をあげて,次勝てば三段目ってことになったんですけど,あんまり三段目のことは考えませんでしたね。それより2回目の6勝を挙げるチャンスが来たって感じで。ただ,それから3日間取り組みがなくて,その間はだんだん,まだか,まだか,って気持ちになってきて,勝ったら上がれるのかなぁって感触がでてきました。それでも土俵にあがったらとりあえず,ひたすら前に出ようってだけ考えて取りました。結果的には,押しこんでから叩くって形でしたが。でも,苦手なタイプを相手に6勝目をとれたので,自信になりました。

それで三段目に上がっての大阪だったんですけど,いつも自分,なぜか大阪では番付をあげるけど勝てない,ってのが続いてるんですよ。今場所も3-4だったんですけど,いつも星より内容があるんで,五月へのいい感触をつかめる場所なんですよね。今年もまずまず充実してました。

今年を通して痛感したのは,自分はやっぱり組んだら話にならないってことです。だから,立ち合いの瞬間にすべてを賭ける,集中する。そんな相撲しかとれないってことです。それがハまれば勝つし,ハまらなきゃ負ける,わかりやすい。

ただ自分の場合,問題は,ノらないと全然できないところです。特に,今年後半みたいに怪我してしまうと,なかなか元のような気持ちになるところまで持っていけない。稽古できないと,どうしても考える時間ばかり長くなってしまうんですよね。

だけどそうも言ってられないし,今回の怪我ももうだいたい回復してきて,っていっても元通りではないんですけど,まず申し合いから参加して,徐々に上げていこうと思います。

だけど,膝にサポーターするのってすげぇイヤなんですよね。特に自分みたいなのがつけると,なんていうか「終わった」感,みたいなのが出るじゃないですか。支度部屋でも,お客さんも,こういう体型の力士が出てきたら,「お,これは動き回るんだろうな」っていう目で見るじゃないですか。なのに膝にサポーターしてたら,そういうイメージが超ダウンですよ。「あ,こいつ動けないんだな」って。でも,どうしてもこう,膝が内側に入ってしまう体型らしくって,あれこれ言ってられないんですよねぇ。それと,そういう形になっちゃうのは,下がった時なんです。だからその面でも,とにかく前にでることが大事なんです。親方にも,とにかく攻撃だけしろ,すくなくとも稽古場ではのこったりしなくていい,って言われてます。

前までは前を取ってとかいろいろやってたんですけど,結果的には,これで一切未練がなくなりました。とにかく前に押す。ぶつかり稽古のまま。あとは,つっぱりをもっと覚えたいですね。かつての寺尾関のような,小さくても真っ向勝負で,つっぱりまくる相撲は,憧れます。理想です。

そんなこんなで反省すべきことの多い1年でしたけど,いろんなことを思い知りましたよ,さすがに。良かったか悪かったかはわかりませんが,これで自分も入門して5年,いい節目になったと思います。当初の「5年で三段目」って目標は達成できたからよかったんじゃないですかね。よかった,よかった。

実は入ったときから,こういう体型のままで三段目に行きたかったんですよ。というのも,力士として特徴になるでしょ。お客さんも細いのが勝つと盛り上がってくれるし。渡(大波)もああして強くなったしね。

ちょっと引っかかるのは,成人したのに,怪我して薬とかもあって,酒がまったく飲めない日々だったのはどうなんでしょう。これも考えてみれば,あのまま成人したてのテンションで酒飲んでたら,調子にのってトンデモナイことになってたかもしれないので,これもよかったのかもしれませんね。

来年は,とりあえずもう一回三段目に戻る。あとは,押す。つっぱりも増やして,ジムも増やして,とにかく押す一年にします。

写真 写真:「あれ,途中で終わってるんだけど・・・」今年の星取表を手に,キビシかったこの一年を自嘲気味に振り返る力山。一瞬に賭ける,力山らしい相撲で,来年は突き進みます。

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荒獅子(あらじし)

21勝21敗 3場所勝ち越し[星取表

今年は三段目にふさわしい安定した強さを備えただけでなく,なによりちゃんこの腕を大幅に上げた荒獅子。特に今年後半,みるみる荒汐部屋のちゃんこの味が美味しくなった気がするのですが,どうでしょう。

全体で5割,まぁいいんじゃないですかね。トントンで。まぁ。

三段目で勝ち越せるようになって,なんとなく三段目に定着した感じがある一年になりましたね。一月の最後の一番で三段目復帰を決められたことが,まぁ良かったんじゃないの。

自分でも不思議なんですけど,七月だけ急に強くなったんだよね。この場所だけほんと特別。もう足が前に出て出てしょうがなかったもん。ビデオで確認しても,まぁ足が出る出る前に出る。立ち合いから自分の力がしっかり前に出てて,自分のもってる威力のすべてをぶつけられたんですよね。ほんと不思議なほどこの場所は強かったね。

あとはダメ。九月,十一月と,まぁ調子は良かったんだけど,足がぜんぜん出てない相撲。

そんな一年だったから一年通して強くなったとか,そういう感触はあんまりないね。とにかく七月だけ強かった。

あとは・・・えっと,どうしよう。とくに印象深い相撲がないや。しいて言えば,やっぱり七月で,相手になにもさせない一気の相撲が続いて,あれは気持ちがいいね。

あとは・・・,ちゃんこの話だったらいくらでもあるんだけど。ちゃんこの話でいいの? この一年はメニューが増えましたね。今までのメニューもいろいろ工夫するようになりました。たとえば鍋のミンチも,豚を入れると歯ごたえが出ておいしい,とか,差し入れで魚をもらっても,この前のなめろうみたいにひと手間かけて,みんなが喜んでくれるメニューになったりとか。東京は東京の,各地方は各地方の,その場所で手に入れやすい食材ってのがいろいろあるんですよね。そういうこともわかってきました。あとは,特に煮魚は旨くなったと自分でも思います。煮込み方が足りなかったんだよね,今まで。低めの温度でじっくり時間をかける。それから,いろいろ新メニューを提案してくださる方がいて,その人と一緒にいろいろ考えてます。中でもエビのトマトソース・スパゲティは好評で,定番の一つになりました。そうそう,びっくりしたのは,この前,練り物をいっぱい差し入れてもらったんで,せっかくだからおでんを作ってみたんですよ。普通,家でおでんするときって,普通のこういう卓上の鍋でつくるじゃないですか。でも部屋だと大きいお鍋でたくさん作るでしょ。そしたら,お店のおでんみたいな味になって美味かったですよ。やっぱり鍋物はたくさんつくるに限るね。

さて,来年は,またちょっと大勝ちして,最高位を更新したいね。そのためにも,まずはきっちり三段目で勝ち越さないとね。6勝したとはいえ,それっきりだから。あとは,もう頭の中はめしのことしかないです。メニューをもっと増やしていきたいです。あちこち食べに行って味を覚えないとね。

写真写真:お祭りグッズに囲まれながら,真剣に一年を思い出す荒獅子。テキパキと指示を出し,手際よくちゃんこ場を仕切る姿には貫録さえでてきました。

(ちなみに,荒汐部屋のちゃんこの基本,鶏の塩炊きは,銀座ライオン「かこいや」各店でもお召し上がりいただけます。)

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