今年の荒汐部屋は,確かに強くなった手ごたえがあります。中でもそれを象徴するのが大波の2012年。いったい何があったのでしょうか。
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―― 完全に弟効果なことは否定できません。港(剛士)が入って,火がついたみたいです。
前半5勝・4勝・5勝と去年の十一月から4連続勝ち越しで,いい前半でしたね。これで,もうずっと言ってた幕下に上がるっていう目標がまず達成できたので,まずそれが今年一番の出来事です。去年の十一月と今年の一月の連続5勝で,ひとつ壁をぶち破った手ごたえがありました。
三月は最初の3連勝が自分にとってでかかったですね。うれしかったし,気持ちが変わったというか,五月場所の前にはもう自信があったんです。幕下を決められる予感が。だから五月もまったく気負いなく取ることができました。
七月に幕下になったんですけど,前半,電車道(シャミチ)でやられてぜんぜん抵抗できなくて,ヤべって思いましたけど,後半3つ勝てて挽回できました。幕下にいくと,なぜか前半すごく固くなってしまうんですよね。特に違いはないはずなんだし,意識してるわけじゃないんですけど,何かヘンに意識してしまうみたいで。その弱くなり方がまたハンパなく弱くなる。1つ勝つと大丈夫になるんですけど。あれですかね,毎場所,初日が大事,とか言っているから,余計に自分にプレッシャーになってるのかな。
九月は三段目5枚目だったんですけど,自分ずっと三段目の60~80枚目にいたせいで,「三段目ヒトケタ」って聞くだけで,なんかすごい人の集まり,みたいな印象で,ちょっと怖かったんです。幕下より怖い感じ。5枚目だなんてトンデモナイって感じでしたよ。でもこの場所はうまくいって6勝。七月からつづけて7連勝してたんですね。なんかものすごく昔のことに感じます。
十一月は幕下に戻ったけど,やっぱりまた前半ボロボロ。だけど,1つ勝ってからはよく動いて,来年いい感じで迎えることができる場所になりました。
三月〜五月にかけてかな,急に自分の型ができてきたんです。コツを覚えるとか,なんかそういう感じじゃなくって,なんとなくなんですけど,でも急に突然,こうなったら勝てる,って型ができました。意識してそういう型になるっていうのでもなくて,稽古の中でも,自然にそういう型の相撲になるっていうか。不思議ですよね。
来年は,幕下で勝ち越したいですね。まだ勝ち越せてないので。先場所の最後の一番,なぜかものすごい上のほうと組まれて,十両土俵入りの後の取り組みだったんです。もうビックリしましたよ。行司さんも十両の人だし,土俵下は座布団があって,元関取がずらっと並んでるし,何よりものすごくまぶしいんですよ。照明がめちゃくちゃ明るいんです。父に現役の思い出を聞くと「まぶしかった」って言ってたんです。でも今までは,まあ明るいけどまぶしいってほどか?って思ってたんですけど,この時,あ,このことか,ってわかりました。来年はまた,まぶしいところに立てるくらいに,幕下で勝ち越して,この最高位を1つでも超えて,年を越したいですね。
写真:寝起きの眠い目をこすりながらインタビューにこたえる大波。今からジムに行ってきます。
少しずつ少しずつ,先への光明を見出して進んできた今年の福轟力。いよいよ本当の勝負の一年を前にして,今年を振り返ります。
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ひとつつかむむところがあった1年だったと思います。
一月・大阪と連続で負け越して,考え方がかなり変わりました。気持ちもラクになりました。結果として,今年の後半からは,まともに引いて自滅する相撲がなくなりました。
あの連続で負け越した直後は,相当落ち込んでしまいました。この地位で負けた,前は4連勝したこともある地位なのに,今,負けた。今の稽古をやってる意味ってあるのかなぁ,って。でも,五月場所の意気込みでもちょっと言ったんですけど,相撲の考え方が変わって,そうしたら気持ちがすごくラクになったんですよね。それまではとにかく勝ちたい勝ちたいって気持ちばっかりで,緊張でガチガチになって,自分の動きじゃなくなってたところがあったんですね。まさに一人相撲で自滅していた。
それで五月は気持ちよく迎えました。そして特に勝ち越してから,ラクな気持ちで,思ってる通りの相撲がとれました。名古屋は勝ったり負けたりですけど,押しこんでの負けとか,負けそうな人から勝ちとかあるので,負け越したって感じはないですね。
九月は落ち着いて取れました。特に元関取で怪我で落ちてた人とあたったんですけど,負けてもともとって気持ちでいったのがうまくいって,勝てたのはうれしかったです。それで4連勝のストレート勝ち越しでしたし。
そして最後,九州で最高位を久しぶりに更新しての5勝。前回の最高位の時は,どうにもこうにもギリギリで,正直に言って手ごたえゼロでした。それでこの場所を迎えるにあたって,あれから1年半たって,あの時とどう感じがかわっているのか,自分が強くなったバロメーターだと思ってました。大阪で負けて以来,前に出て負ける分にはまあいいか,っていう気持ちがここにきて効きました。常に挑戦者の気持ちで,おちついてぶつかっていけました。ただ,4回あたってる人とまたあたったんですけど,また負けたんです。ツメが甘いんですね。この突いていってからの流れっていうのがまだまだなんです。けど,突き自体はちょっと強くなってきている感じがしています。
そうこう言ってる間に,荒汐部屋全体が強くなってきました。みんながそろって強くなってくるのはやっぱりうれしいですね。稽古場の雰囲気もよくなってくるし。稽古量も多いですし。なんて言ってるけど,自分が抜かれちゃアレだからうかうかしてられません。
もうとにかく稽古がしたいです。少々の風邪とか痛いとかでは休みたくないんです。休もうと思っても,休んでていいんだろうか,とか,何か罪悪感っていうか,やらなきゃやらなきゃって思いに耐えられなくなってくるんですよね。自分にはそっちのほうがつらい。だから,とにかく稽古場に下ります。可能なら常に稽古したいくらいです。
25歳までに関取,ってのが最初の目標でやってきて,来年その25歳になります。なんとしてでも来年,という気持ちです。だから来年の抱負は一つ。十両昇進,です。
写真:今年の全取組を見返す。土俵上で硬く鍛えられた福轟力の足裏。
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最後までお読みいただきありがとうございました。ご覧いただきました通り,2012年の荒汐部屋は,各々が各々の成長を遂げた充実の一年だったようです。この一年で得た力が,来年どういった形で花開くか。どうか来年も荒汐部屋勢を,ひきつづき変わらずご注目いただきたくお願い申し上げます。
本年もありがとうございました。どうぞよいお年を。